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胃薬の歴史

胃は胃酸を作り出しており、食べ物の消化吸収に大事な役割を果たしているのですが、これが悪さをすると胃が痛くなったり、胸焼けがしてきたりします。胃薬の歴史は、胃酸をいかに抑えるかの歴史です。

胃酸が作られるメカニズム
~キーワードは「刺激」と「胃酸を作る細胞」~

ヒスタミンH2受容体拮抗薬

胃酸は「胃の壁にある細胞」から分泌されます。
「胃の壁にある細胞」は、様々な刺激を受けて胃酸を作りはじめます。
刺激のひとつが、ヒスタミンと呼ばれる物質で、「胃の壁にある細胞」にあるヒスタミンH2受容体にくっつきます。ここをブロックしてしまえば、胃酸は分泌されなくなる、これをヒントに開発されたのが「ガスター10」に代表されるヒスタミンH2受容体拮抗薬です。ガスターの発売は1979年で、大体1970年代にほかのヒスタミンH2受容体拮抗薬も開発されました。

この薬の開発で、それまで分泌コントロールが困難であった胃酸が効果的にコントロールできるようになったのですが、体には胃酸が欲しい細胞もたくさんいて、ヒスタミンH2受容体拮抗薬を飲んで胃酸の分泌が減ると「胃酸をもっと作って!!」といったホルモンを分泌します。これはヒスタミンH2受容体とは別ルートで「胃の壁にある細胞」に入ってくるので、結局数日たつと再び胃酸が分泌されるようになってしまうのです。

プロトンポンプ阻害薬(PPI)

その欠点を克服するように開発されたのが、プロトンポンプ阻害薬と言われる薬です。
ラベプラゾール(商品名:パリエット)
ランソプラゾール(商品名:タケプロン)
オメプラゾール(商品名:オメプラール)

これらは、「胃の壁にある細胞」から胃酸が出るところを抑えて、胃酸が出ないようにします。
どんな刺激が来ても出られないわけですから、当然胃酸の濃度は下がります。
これが現在の主力の胃薬です。

エソメプラゾール(商品名:ネキシウム)は、オメプラゾールの構造の中に、効果の高いS体と効果の低いR体というものがあることがわかっていましたが、オメプラゾール開発時にはそれを分離することができなかったもののその後の技術開発で効果の高いS体のみを集めることができるようになり製品化されたものです。名前は、S体のオメプラゾール、つまり「エス」「オメプラゾール」で「エソメプラゾール」とされています。

プロトンポンプ阻害薬は有効成分が胃酸と反応して、初めて活性化する特徴があり、有効な濃度に達するのに時間がかかるのと、活性化したものも不安定なためそのまま分解されてしまう欠点がありました。

ボノプラザン

それを克服するように開発されたのがボノプラザン(商品名:タケキャブ)です。
この薬は胃酸による活性化が不要で、飲めばすぐに効果が出てくるので、立ち上がりがとても速いです。また、安定した物質なので、長くとどまることができてより長く効果を発揮することができるとされています。

使い分け

ピロリ菌の除菌の時にはピロリ菌の周りにある胃酸を強力に止めてピロリ菌を丸裸にして、抗生物質で一気に勝負を決める必要があるため立ち上がりと持続力が必要です。除菌の時にはボノプラザンを使用します。胃潰瘍で胃の壁が破れそうになっているときや、いつ出血してもおかしくないときにも立ち上がりの速さを期待してボノプラザンを使用しています。それ以外の疾患の時にはその時の状態によって適宜薬を使い分けています。

胃痛でお困りの時はご相談ください。
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