5月から本格的に健康診断が始まります。
我々開業医には、それとほぼ同時に、異常を指摘された方が受診されます。
高血圧を指摘されて受診された方は大抵「血圧の薬は始めたらやめられないんでしょ?」と言われます。
この質問、一部正解で、一部間違いです。
血圧は、イライラした時や、ここぞという踏ん張り時に上がってくるものです。
仕事で頑張らなければいけないときなどは血圧は上がってくれたほうが調子が出ます。
そのうち、血圧が上がってくれたほうが調子がいいから、何とか下げないようにしようと誤解をしてしまうわけです。
そうするとなかなか血圧が下がってこない負のスパイラルに入ってしまいます。
私がやろうとしていることは、「まぁまぁ、そんなに頑張らなくてもいいから、普通に血圧が低くても仕事はできるから」
と教え込んでいくことです。いきなり血圧が高い人に、これくらい使えば血圧が正常化するはずといって薬を処方すると、
確かに血圧は正常化しますが、先ほども申し上げた通り頑張れなくなってしまうのでふらふらしてしまいます。
少しずつ体に慣れさせていくように薬を増やしていきます。
数カ月使っていくと、体も「意外と血圧が低くてもなんとかなるじゃん」と理解してきます。
そうしたら今度は薬を減らす段階。
高血圧がおきる要因として、
①食べ過ぎ運動不足、②ストレス、③気温(寒いと余分な力が入って血圧が上がる)
があります。
減らす段階になって、①②③のどれかが改善できていれば薬を減らしていきます。
①なら、運動をして体重が減りました。
②なら、仕事は変わりないけれど、疲れが残らないよう睡眠時間を増やしました。
③なら、春になってガタガタ震えることがなくなりました。
といった具合です。
ここまで書くとお分かりと思いますが、①を達成するには努力が必要ですし、②もそう簡単にいかない。
だから、たいていの方はどうしようもなくてダラダラ薬を飲み続けることになってしまうのです。
ただ、③は違います。春になればだれもが暖かいと感じます。夏にコートを着ている人はいません。
春から夏にかけては血管が緩んでくる唯一の季節です。
そのため、当クリニックでは3月~5月に血圧が安定している方には全員薬の見直しをしています。
患者さんによっては、肌寒くなるまで血圧が上がらなければいったんおしまいにしましょうという方もいます。
柔軟に対応していきましょう。